GORDIAN KNOT ゴルディオスの結び目
ニルス NILS
 

       Nils 2 mini




 一枚目の自作の銅板画ができました。
 十年前にアートもののプリントTシャツを着ていたころだったら買ってもよかったかなというような出来にはなりました。もっとも、図柄としては着るのに適さないですが・・・

 
 テーマとしては寓意的なキャラクターで、「ニルス」といいます。これ自体十年前の着想です。現在ではギリシア神話のアポロの分身みたいなものとして考えています。


 (適価で販売します。四十枚限定です。質問・注文は下部のコメント(CO)欄にSECRET(管理人のみ閲覧可)チェックをして連絡先付きで記入して下さい。Tシャツでなくて版画です。図版部分24.5x34.5cm。大きな画像をお送りすることもできます。)
 


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ヘンなお話も連載中です。



其三 熊王生誕



 団子温泉というところでした。
 たましいぬけてゆったりと、
 熊さんがつかっておりました。
 猿は遠くからみていました。
 すると男が来まして、となりにはいってみました。相当に変わり者なんでしょう。すごい度胸です。何のつもりなんでしょうか、人間のところではぐれて自分を犠牲にするつもりだったのか。
 しかし熊は目をぱちとあけましたが、そのままつかっておりました。
 男のほうがむしろもうたえられなくなったので、やけくそなのか、歌を歌いだしました。はじめはしずかに、だんだん大きく、気持ちよさに任せて歌いました。

 わしゃよー
 猿にもあらず
 熊にもあらずーー
 さりとて人にもあらずとよーー

 「ンモ」
 熊が声を出したので男は黙りました。横目で熊を見ます。
 しかし熊はもういちど「んー、モ」
 というと黙ってしまいました。

 いっしょに歌いたかったのかもしれません。
 

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 はじめから宍戸バイケンがくるわけもなく、狐侍(きつねざむらい)が来ました。
 そんなかわいいものが来てもいいのでしょうか。
 しかしじつは狐はこわいものかもしれない。
 何のことなんでしょう。もしかしたら、お稲荷様の奥に住んでいる奇人なのかもしれない。

 しかしその道の途中でウサギに会いました。ウサギはベストとジャケットを着ていてます。
 「やあ、ずいぶんふるい格好をしているじゃあないか。」 
 「ご挨拶だね。いいかい、近代というのは君らの傲慢だったって評判じゃあないか。」
 「それも言い過ぎだって評判にもう移ってるよ、君。だからいまはもういっしょにまたべつべつに、やれることをやろうじゃないか」
 そんなわけでわけのわかったふたりは微妙ににこりとして一緒に歩き始めました。月が冴えています。
 「こういうときはさらさらとススキが揺れるとよいのだがね。」
 「うん。ときに、あの熊といっしょに温泉に入った男ね。あの話。」
 「うん。あれね。きいたよ。」
 「じゃあどうしたってかい。きみのほうのから聴こう。」
 「うん。あれね。じつはあの男自身が熊というあだ名で人里を離れていって山奥の温泉に住み着いていたというんだよ。冬を越えるのにいいってさ。」
 「ああ。そう。やっぱり。でも、あれでしょう」 
 「そう、それがあの主の熊ということになったんだね。もう、猿と温泉に入って、人里のやりかたなんてもう忘れちゃったしね。」
 「そうか。」
 「それだからさ、猟師たちが来て見つかってさ。それで見たら後ろから猿たちがいっしょについてくる。これはちょっと怖いというかね。もうこれは山の動物だって。」
 「ううむ。」
 「それだからちょっとどうしようかって帰って相談したんだけど。だんだんまあ、里のほうでも考えを変えていてね。助け出そうというのはやめたらしい。」
 「それで。」
 「そう。だから、熊の社というのを立てることにしたんだって。それもずいぶん変った話でさ。熊も使えるようにとか言って、猿でもなんでも勝手に入って使えるようにしてそういうのをきれいにつくってやって、それで引き上げたって」
 そこまで話したときにふたりは里を見下ろす高台に来ました。明かりがすこしだけついています。
 ふたりのおしゃべりは止みません。
 「猫岳のことは聞いたかい。猫が修行しに行くっていうんだがね。」
 「ああ。」
 「それが何って、人間が修行をしないっていうだけだろう。人間が修行するようになったらまた、ぼくらが修行しに行くって事にも納得ができるようになるんだよ。意味がかわるからね。」
 「ほうほう。それはおもしろいね。そういえばね、天竺のほうね。あっちのほうの国で、猿がずいぶん崇められているというんだ。」
 「ふむ。それで。」
 「それがね、それでもう人間が手を出せなくなってね。どんどんもう食べ物を盗んでやり放題になってしまったのだ。」
 「それもねえ。」
 「そうだろう。お供えは別にしてるんだよ。そんなのはもう、親を蹴っ飛ばすこどもをちょっと思い出すよねえ。舐めすぎているんだ。」
 「ふん、腹しだいということかな。」
 ススキがさらさらとなっておりました。


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 しかしそこで翔太は我慢ができなくなってがさがさと草むらから飛び出してふたりにむかって声を張り上げました。「きみたち、聞いてくれ、これはそれではどう思う。黒澤明がね、カバがおじぎをしてふすまを開けて入ってきた夢を見たっていうんだよ。これはどうかね。礼儀正しい動物というのは僕らの勝手かな?あとだね」
 しかしすぐにふたりは後ろを見ながら逃げ出しました。翔太はすこしだけ追いすがりながら続けました。
 「細野ハルオミがだね、タヌキに似ているというんで、自分をみたタヌキをつけていくと、仲間のものに、『いまタヌキが人間になったものを見た。良きことだ。』と言ったというんだ。これは君たち、」
 しかしもうふたりは消え去っておりました。
 「どう思うかね・・・」





Art work by (c)Gigi gordianknot.blog74.fc2.com/
グレース・ケリー ちゃん  Grace Kelly
                600_GraceKelly_.jpg






Mikaの歌でも女優でもない、ここで貫禄あるジャズの大御所と対等の演奏をしているグレース・ケリーちゃんは2006年当時で14歳、脱帽です。







Russell Malone & Grace Kelly







Phil Woods & Grace Kelly















続かぬという言うたのに再開する。題して



意思の森・翔太ロー 



 「わたしの内面に入ってこないで。」
 しかし彼女の額にはモニターがついていたので翔太は目を反らしてしまった。さいわいと写っていたのはニュースだったが、これがワイドショーであったらもすこし鬱であろうと思われた。しかしはっとして翔太はじぶんの額に手をやった。つるりぐにゅりと液晶ディスプレイ。なんとなく液晶でよかったかと無意味なことを思いつつも思わず彼は無を念じたのであった。・・・
 だがどうしてこうなったのか。彼は駅のホームのひとびとを眺めながら考えた。するとテレビ番組が額に写っているひとは目がすわっているだけだが、ネットをやっているひとは目がややうつろなのに気がついた。
 いずれにしても、われわれは芸人のモデルに嵌められているのだ。
 と翔太は重ッ太。いつからか芸人たちが客との垣根をとりはらって、仲間内の冗談ごとをおしつけるようになったころから・・・
 それにまた、ずるい普通ぶりかた。醒めていないとはずかしいし暗くってもいけないのだという冷やかしで出来た防御構造。
 がくっと翔太は居眠りで頭部が前にかしいで目が覚めた。そういえば、子供のころ電車のなかでも頭ががくりとそのときは後ろにかしいで窓にぶつけるほど夢中で遊んだなあ、寝ぼけて意味のわからないことを言いながら居間に出て行ったりもしたなあ・・と翔太はゆるい目つきで思い出した。
 そうだ、とにかく進んでいく時代なんだ。これは悪いことも大きいが、それだけじゃない。漱石はたしかに品位のある観点をもっていた、でも知と文の時代は顧みるということに還元されすぎてしまったのだ。われわれは総じて、「批評家からの大脱走」をつうじて自分の文化を築いてきたのだ・・・
 このように翔太はぐるぐると考えたが、彼の目はじゅうぶんにいまや引き締まっていた。



 夢


 「妹をまもらなければ、僕が。」
 たしかにじぶんには妹がいない、はずだ。翔太はこどものころの夢を思い出した。
 幼稚園で好きだった女の子の夢だった。その子はじぶんの家族のひとりになっていて、お気に入りの食器を使っていっしょにご飯を食べ、夕日のなかに皆で立っていたような気がした。
 翔太は座敷わらしのことを思った。

 遊んでいるうちに、いつのまにか、こどもの数が増えています。みんなまえからいて知っている子なのですが、何回数えてもひとり増えているのです。
 こんなのが、座敷童子です。

 狐の嫁入り。座敷わらし。人形の嫁。座敷わらしの嫁。桃の節句の雛人形。

 ひとりふえているよ。あの娘はだれ。
 ふりかえるとそこには桃の花を咲かせた枝が花瓶のなかにありました。
 はなやかな色の着物の娘の影を追いかけていくと、切られてしまった桃の木の畑に来ました。
 
 それは黒澤明の夢で、桃の花のおはなしです。
 
 座敷わらしの嫁、そんな話はありません。
 いいえ、それは翔太の夢でした。座敷わらしの嫁入りのお話です。

 


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